公開: 2024年2月24日
更新: 2024年7月23日
国家神道とは、明治維新以降の近代天皇制の日本社会において、一種の国教制度として確立された歴史学的な考え方です。その根幹は、皇室の祖先神とされる天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀(まつ)っている伊勢神宮を全国の神社の頂点とする神社として、それを国家(政府)が他の神社や神道から区別して、特別に管理べきとする考え方です。徳川幕府による大政奉還によって、日本の王政復古を成し遂げた明治新政府は、1868年、祭政一致、神祇巻再興をを布告し、信教の国教化を推進し、神仏判然令を発して、神社から仏教的な要素を取りのぞく決定をしました。
しかし、政府が推進しようとした神道国民教化策は失敗に終わり、新政府は、「神社は宗教ではない。」と主張し、神社を「国家の宗祇である。」と位置づけ、神社神道を他の諸宗教とは違えて、公的な組織と見なすこととしました。これによって、国家神道への公的な位置づけが確定されました。1882年、内務省に神社局が設置され、神社行政は、他の諸宗教とは区別して管理されることとなりました。その意味で、神道は、国教に似た宗教であると考えられる一面、政府による国民統治の正当性を裏付ける思想であったと言えます。これは、ヨーロッパ社会において中世後期から立憲君主制が確立する近代までの、各国国王による国民の統治を正当化していた王権神授説に似た思想であったと言えるでしょう。